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勝手に勉強会 ウールはすごい

今まで洋服の素材について色々と書いてきましたが、今回は私個人のイチオシ素材であるウールについて詳しく書いてみたいと思います。長いけど、マジですごいって思わせる自信あるので是非読んでみてほしい!

ウールってなあに

初めてワタの状態から紡いだウールのマフラー

そもそもウールって聞いたことあるけどなあに?ってとこから。
ウール=羊の毛(羊毛)です。
洋服の品質表示タグにはウールまたは毛と書いてあります。

注意したいのは、毛=ウールではないということ。
毛の中にはカシミヤ、モヘア、アルパカなどのいわゆる獣毛といわれる他の動物の毛も含まれています。人間の髪の毛だって猫だって犬だって、繊維製品にしてしまえば毛と表示されます。その商品の特徴をアピールする為に、詳しく動物の名前まで書いてくれているタグが多いけど、書きたくない場合は毛だけでも問題はありません。毛は幅が広いのです!

さて、その毛の中でも私がおすすめなのが羊の毛、ウールです。
そしてウールの中にもさらに沢山種類があります!というと、えー、、、と思うかもしれませんが、安心してください!世の中のウールは80%以上がメリノです。
特別な記載がない限りメリノウールだと思ってオッケーだと思います。

人間の為に生まれたメリノウール

世の中には3000種を越える羊がいます。その中でもメリノ種は人間の衣類になる様に長い時間をかけて改良され出来た品種です。
他の品種は保護色のダークカラーの毛だったり、繊維が太く張りがあったりなどで、糸にしにくい、着心地が悪い、綺麗な色に染めにくいなど様々な点で衣類用には不向きなのです。

我が家のギャッベ。柄の部分以外は、羊のそのままの色。色んな色がある

それに対しメリノは繊維が細く柔らかく、真っ白で、他の動物の毛と比べると圧倒的に上等な繊維なのです。
ちなみに人間の髪の毛と比べると細さは1/2以下です。ファインメリノとかエクストラファインメリノとか細くて高級な糸になると、1/3とか1/4近い細さの繊維になります。
細いと何がいいかって、柔らかくなり、肌触りもやさしくなります。太いと張りが出て硬くなり、ごわごわチクチクします。繊維の太い種類の羊毛は、フェルトやカーペットになったり衣類用以外の用途になります。

早く毛を刈って欲しそうな羊ちゃん

ただ、切ないことにメリノは毛がどんどん伸びて沢山提供できるように進化させられたのに、自分で毛が刈れない。
昔脱走した羊のシュレックが、前は見えないわ、体毛重すぎるわとえらいことになっのは有名な話だ。

なんでウールがいいの

セーターを着ているということは羊に包まれているということ。私の手編みの親子セーターもパンダだけど羊の毛。

ではなぜウールがいいのか。それは人間に近い素材だからです。

ウールは羊の毛です。羊の毛は羊の体を守る為のものです。
綿は綿花です。綿花は綿の種を守ったり、種子を遠く運ぶためのものです。
麻は植物の靭皮(茎の部分)です。植物をまっすぐ立たせる為のものです。
絹はお蚕さんの出す糸です。昆虫を守る為のものです。
化学繊維は植物または石油からできています。

人間の体を守る衣服はどれがいいでしょーかっ?
と聞かれたら、同じ哺乳類の羊の毛を選ぶと思います。
そうなんです、繊維が作られた目的を考えればもうそれだけで答えが出てしまうのです。

ウールの長所

具体的にいいとこを見ていきましょ。

保温性・断熱性

一番は保温性・断熱性ですね

ウールにはクリンプ(縮れ)があります。ストレートヘアではなく、くせっ毛さんです。細かいクリンプのおかげで繊維同士の間に隙間が出来、生地に空気を多くため込む事が出来るので、体温の熱を逃さず温かさを保つ事が出来ます。
また空気を含むという事は、熱を通しにくいという事なので、夏の暑い時には逆に中は涼しく保たれるという事なのです。

そうなんです、だって羊は一年中ウール着てるんですもの。全部脱いでビキニに着替えてみたいわぁーと思ってもできません、、それでも大丈夫だからウールってすごい!

あと、冬に綿のジーパン履くと冷たいからコタツで温めてから着たりしますけど、ウールの製品なら冷たくないですよね。熱伝導率が低いってこれがいいですよね、いつも助かってます。

軽さ

空気を含んでいるという事は軽いという事になります。
セーターを同じ太さの綿の糸で編むと、かなり重たくなります。
重たいと羊も肩こりますからね!

吸湿・発散性・保湿性

北海道で拾ったデカいまつぼっくり。スケールはこんなイメージ

ウールの繊維表面にはスケールと呼ばれるウロコがあります
このウール繊維が湿気をため込むとウロコが開いて放湿し、水分が減少するとウロコが閉じて、快適な水分状態に保つように勝手に調整してくれるのです。

エアコンか?!と思いますが、そうです、だって羊はエアコン使えないもん。うちわであおげないもん。こうするしかないんだ!

しかも、羊本体に接続されていない、刈られた後の毛でも調整を続けてくれるのです!

なので羊は生きている繊維とか、呼吸する繊維とも呼ばれます。電源もついてないのになぜそれが出来るのか?!すごいですよね、ウール。
私たちの髪の毛もキューティクルがあるけど、調整してくれてるのかな?

だから蒸れやベタつきが感じにくく、実は夏にぴったりの素材でもあります。
ウールは一年中着られるんですよ。サマーウールと呼ばれる細く繊維でシャリ感(サラっとした肌触り)のある商品も世の中には沢山出ています。

昔、繊維新聞の記事で一年間毎日同じ黒のウールのワンピースを着る実験をした女性の話を読みました。毎日同じ服を着ていても皆全然気づかなかったわよ、という結論だったそうですが、それは後にも続きますが、ウール素材だから出来た事だと思います。

抗菌・防臭性

10年くらい山で愛用していたウールのニット、これなら臭くないわ!ニコッ

この機能には本当に助けられました。通常、登山で使用するインナーは化学繊維またはウールが推奨されています。綿だと乾きにくく、濡れると冷たく体温が奪われて危険だからです。

だけど、化繊のインナーで一日中、山の中を駆けずり回って帰ってくると、服を脱ぐと臭い!女子だけど普通に臭い!のです。でもあら不思議、ウールだと臭わないんですよ。不思議なくらい。私はスノーボード用のウールのインナーの製造に関わっていますが、トップクラスのスノーボーダー曰く2.3週間くらい山の中で着っぱなしでも全然平気と言います。本当にこの違いは明らかなので体臭が気になる人にはウールおすすめです。

だって、、ねぇ、羊はお風呂入れませんもん。たまには、ちょっと温泉でも、という訳にもいかないでしょう?しかも羊たち、蒸れてないけど群れてるから、臭いのはお互いちょっとねぇ。。という訳でこういう天然の免疫機能もついています。

撥水・防汚性

左が綿、右がウール。コーヒーをこぼすしても綿はすぐ染みになるが、ウールははじく

これもしょっちゅう助かってる機能です。コーヒーとか泥汚れとかTシャツにこぼすと、すぐ染み込んでお洗濯!となってしまいますが、セーターの上だと水分が玉になり、さっと吹けば汚れがとれてしまう事があります。これはウール繊維の表面に薄いワックス上のコーティングがあるからです。撥水だけでなく、カビの発生を抑えたり、バクテリアの成長を抑制してくたりします。
また、保湿性もあるので静電気も起きにくくホコリなどの汚れもつきにくいです。

娘に編んだウールソーカー、縮むけどこれはさすがに洗って使った

私は娘の布おむつカバーにウールソーカー(短パン)を使用していました。
布おむつは綿、カバーはウールにしておくことで、おしっこの水分は綿が吸収してウールはおしっこがついてもタオルで拭き取ればまたすぐ使えましたし、洗濯もたまにする程度で済みました。長いこと洗わないとさすがに臭いましたが。

すごいですよね~でもそうなんです、だって羊は急に雨が降ってきても傘をさせませんもん!長靴も履けないし、レインコートもなーい!雨や泥はねで濡れたり汚れたりするの、嫌なんですもの。

濡れても温かい

冬山の装備、オーバー手袋は化繊

とは言っても、長時間雨が降り続けば撥水性があるといえど、ウールも濡れてびしょびよになってしまいます。でもね、でもね、濡れても暖かいんですよ、ウールは。
ウールは濡れると吸着熱を発するんです、しかも熱伝導率が低いので綿みたいにヒヤッとせず体温が奪われません。そして吸湿性があるからどんどん肌綿から水分を吸い上げてドライに保とうとしてくれるのです!

ちなみに綿は植物ですから、基本的に水が大大大好きです。だから水を良く吸うし、一度吸ったらなかなか離そうとしません。だからなかなか乾かないのです。

これもよく山で体感しました。雪山で濡れた帽子や手袋、靴下。濡れていても明日も使わなければいけません。夜寝るときに寝袋と自分の間に入れて温めて乾かします。それが綿素材だとただただ不快だと思いますが、ウールのものは本当に呼吸しているようにじっとりと温かくなってくるのです。もわーんって感じ。あのじんわり暖かい感じがとても優しい。

羊は屋根もテントもない一年中外で暮らしても大丈夫な設計なのです。あなたたち、すごいよ、強いよ。。。

伸縮性(シワになりにくく、型崩れしにくい)

これも人間の洋服として便利な機能ですよね。
クリンプのおかげでウールは伸縮性があります。伸び縮みしやすく弾力があります。
なので、ウールの製品をアイロンをかける事は少ないと思います。また、伸びて戻る力、回復力がある為、シワになったとしても他の素材より簡単に戻す事ができます。

燃えにくい

自作のウールカーテン

ウールは難燃性素材です。どういう事かというと、綿の糸を燃やすと紙を燃やした時の様に炎を上げて素早く燃えて灰が残ります。対してウールはというと人間の髪の毛を燃やした時と同じです。やったことありますか?線香花火の様に玉になりジリジリとゆっくり熔解し、途中で止まります。つまり燃えにくいという事です。

これはとても大事な事です。もし羊が難燃性の毛でなければ、小さな炎でももしついてしまったら、あっという間に燃え広がり、火だるまになってしまいます。
これは人間でも同じですよね、料理中に髪の毛に火が付いて燃え広がったら大火傷になってしまいますから。

だから焚火なんかする時の素材は綿や合繊はやめておいた方が本当はいいです。
合繊の中にはものすごい勢いで溶けて皮膚に張り付いて大火傷となるような素材もあります。
カーテンにも難燃性の素材が推奨されていますからウールがぴったりです。

空気清浄機能

見えてるカーペットや絨毯は全部ウール。ギャッベ以外は手作り

インテリアにも向いているのには難燃性に加え、空気清浄機能があるからです。
有害化学物質を吸着し、無害なものにする働きもあります。加えて静音性もあり化学繊維の様なカサカサ音もでません。

ウールについてのエピソード

長かったですが、とりあえずこんなところです!どうです?すごいでしょ!すごいの押し売りみたいになってしまいました。そしてちょっと聞いて欲しい悲しいエピソードを最後にひとつ。

昔冬山登山で、同じパーティーにいた男性が、ウールじゃなくて化繊のインナー手袋をつけていました。インナーなので周りの皆はそれに気づきませんでした、他のメンバーは皆ウールです。
稜線の強風にたった数時間吹かれた結果、彼だけがひどい凍傷になり指を一本失いました。
雪山では絶対ウールじゃないとダメなのです、こんなに発展した世の中であってもそれは絶対です。究極の環境の中で私たちの体を守れるのはウールしかないと私は思っているのです。そんな極限の場所に行く人は少ないと思いますが、繊維の事を知ると身の周りの色々な事に応用できたり、快適に過ごせたり、身を守れたりするのです。

ちょっとしんみりしちゃいましたが、いざという時はウールを着てください、少しくらい他の繊維が混じっていてもいいです。ウールのストールを一枚羽織ってください。
そんなプチ知識が役に立つことがもしかしたらあるかもしれない。

ウールのデメリット

今までを読んでくれた方は気付いたかもしれないが、今世の中で機能性と呼ばれる製品があるが、それらの機能性をウールは最初から付加されている。

だったらヒートテックとか作らなくてもウールを着ればいいじゃないか?という話である。
本当にそう思う。でも、どんな繊維にもデメリットがあるとおり、ウールにもあるのだ。

チクチクする!

そう、セーター着れないという方いますよね。特に粗い繊維を使っている太い糸で編まれたものなどに多いです。先日我が家でも、元夫がワークマンで買ってきたメリノウール100%の薄いインナーロンTがチクチクすると言って私にお下がりをくれました。私は鈍感人間なので全然平気で着れています。個人差ありますが、大きな問題です。

洗うと縮む!

綿も洗うと縮みますが、ある程度でとまります。でもウールは洗う度にどこまでも小さくなっていきます。これはウールが水分と温度に反応して、スケールが開き、絡みやすくなるからです。
これが最も厄介なデメリットではないでしょうか?そもそも羊はお風呂入らない前提ですから水に濡れた時に絡まないという設定はいらないのでしょう。

大量生産が出来ない!

ウールや獣毛は他の繊維に比べて値段が高いです。それはウールの供給量が少ない事が原因です。衣料品全体のウールの占める割合も驚くほど低いです。

でも供給量をあげようとすると、羊を飼うための土地や、飼料をつくる為の土地が必要になり人間がどんどん飢えていく事や環境への負荷も大きくなっていきます。毛の原料は私たちと同じ、ご飯を食べ、感情を持つ生き物です。毛も人間が一頭一頭手で刈っていきますから(最近は服を脱ぐみたいに、ペロっと毛を脱げる羊も品種改良で出てきているが!)、その生産工程を考えても、圧倒的に綿や合繊に比べれば生産性は劣ってしまいます。

という訳で、本当は羊を着れば済むけれどデメリットがあるから、わざわざ合繊をこねくりまわしたりして機能性を付加した商品が開発され続けているのです。ただ、このウールのデメリットが出ないように、他の繊維と掛け合わせて作られた機能性素材なんかもあります、私も山でよく着ています。

最後まで読んでくれてありがとう!

長くなりましたが、とりあえず私のウール愛のアウトプットが一通り出来たのでちょっと落ち着きました。まだまだ言いたりないですが、今度は言葉じゃなくてものづくりでアウトプットしていきたいです。

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