
オンライン編み機教室の生徒さんとのグループチャットで
「一体あなたはどこに向かっているの?ってよく聞かれるし、自分でもそう思う・・」
という投稿があり、それに共感の声が相次いだ。
- 色々やってるけど、何も形にならない
- モノづくりが好きだけれど、思い通りにいかないとやる気がゼロになる
- 細部にこだわるあまり、前に進めないことがある
- 課題に集中しきれず、脱線してしまう
そんなふうに、自分のモノづくりのやり方に迷っている人は少なくありません。
今回はそんな悩める生徒さんの一人、Mさんのお話。
Mさんの印象

私のMさんに対する最初の印象は、「機械に強くてセンスがいい人」でした。
機械編みをやってみたいと思いネットで中古の編み機を購入したMさん。
まだ編んだ事もないのに、迷う事なく分解してメンテナンスに挑戦しました。
その後すぐ私の教室に入り、お申込み直後の質問で「このボロボロの部品はなんでしょう?」と送られてきた写真を見て、自分の目を疑った。

それは、普通素人ではそこまで開けないところまで開けちゃうと出てくる防音用のスポンジで、まさかそこまで普通開ける!?それで自分で戻したの?!と信じがたい思いで、「ヤバい人来た!」と思ったのが私の正直な印象である笑。
私だって怖くて一人じゃ開けれなかったのに!
さらに、デザインにこだわりが強く、自分が作りたいものをいつも絵に描いて私に見せてくれて、すごくセンスのある方だなぁ〜と感心していた。
Mさんの悩み

私から見ると、優等生タイプなMさんだが、そんなMさんにも悩みがあった。
「自分が本当に作りたい形を、自分が使いたい糸や生地で作りたいけど、自分でパターンはひけないし、好きな糸や生地も売ってない。
自分で作れるようになりたくてお教室に行っても、作る課題は決まっていてそれを作らないと前に進めない。でも作っても着ないものは作りたくなくて、今までそれで挫折を繰り返してきた。」
ということ。

「とにかくこだわりが強くて、あと、飽き性なんですよね〜」
ともおしゃっていた。
編み機をやろうと思ったのも、手編みで靴下が完成しないから。
「片方編んだら、これともう一枚同じものを編むなんて出来なくて、、編み機ならそこがクリアできるのかなって思って」
とお話ししてくれた。最初は靴下編み機を買おうかと思った程だったという(その感覚もすごい)。
Mさんの自由なモノづくり

そんなMさんが私の教室を選んだ理由は、「課題を自由に作れそうだったから」。
私の教室では課題はあるけど、それをそのままやってもいいし、アレンジしてもいいし、それと同等の技術を習得できるものであれば、自分の好きなものを作れば良いとしている。
という訳で、Mさんの自由なモノづくりが始まった。

まず形から私と相談が始まる。
時には私が編み図を書いたりMさん用の課題を作ったり、簡単なものはMさんが自分で製図を書いて見せてくれた事もあった。
糸選びにも時間がかかる。
私の持ち糸や、ネット上の糸、色々見ても好きなものがない。
そこで相談がくる
「これって、染める事できますか・・・??」
そこからまた草木染め、藍染、化学染など、染めの世界へしばし旅立つMさん。

やっと戻ってきて、今度はこう言う。
「わかなさん、やっぱりこの形だと太い糸が合うと思うんですよね・・太い糸が編める編み機が欲しくなっちゃって・・・」
今度は編み機探しの旅に出るMさん。
もちろん新しい編み機を買えばMさんは分解せずにはいられない。
少し分解・掃除して、最初に買った編み機との違いを私に熱弁してくれる。
「ブラザー社と、シルバー社のモノづくりの姿勢の違いがよく分かりました!」
それが各メーカーのモノづくりの特徴をかなり的確に捉えていて、ここでも度肝を抜かれた。

メーカーに直接修理を持ち込んで、その時の感想も熱く語ってくれる。
「私たち編み機ユーザーがどれだけメーカーの方の情熱に支えられているか痛感した!」
そうして私と熱く編み機の未来を語り合ったりもした。
こんな感じで、編む前にたっぷり時間がかかる。

Mさんも、「一体私どこに向かって何やってんだか分からなくなっちゃう」と何度も冗談まじりで訴えてくれた。
しかし、私にはMさんが輝いて見えていた。
ひとつひとつの探究の旅が楽しくて仕方ない、いつも笑顔はちきれんばかりの無邪気な子供の様だった。
だからいつもMさんにはこう言っていた。
「やりたいと思った事は全部やってください。課題やらなくちゃ、とか全然思わなくてもいいし、結果的に自分がやりたいのは編み機じゃなかったと思ってもいいから、とにかくやりちらかしてください。
自分て中途半端だなぁ、なんて事も思わないでくださいね。無責任でもいいし、無駄遣いと思ってもいいし、もちろん失敗しまくってもいいですから。しっかりやりちらかさないと見えてこないです」

これは私が起業する時に教えてもらった、自分のライフワークを見つける為の方法で、数年前の私がまさにそうだった。
自分のライフワークを見つける為に、仕事を辞めて自分の好きな事をやってはこのブログを書いていた。
自然農・子育て論・草木染めに人形づくり、草木染め、羊の毛刈りに糸づむぎ、ワークショップに製品販売などやりたい事を色々やった挙句に、この編み機講師という職にたどり着いた。
ぴったりハマったモノづくり

Mさんのモノづくりは編み始めてからも難関が続いた。
製品の仕上げ方を間違えて大作を縮めてしまうなど、課題どおりじゃないが故に、隠れたトラップも沢山あった。
ところがある朝、Mさんからメッセージが来た。
ついに、Mさんが納得する作品が出来た!という嬉しい報告だった。
この事をブログに書いてもいいか?と聞くと丁寧に絵手紙もつけてさらに報告をしてくれた。


バラクラバが完成したときに、パズルのピースが全てハマった!
みたいな感動があったんだと思います。
ゲージをとる理由
スワッチを作る理由
ゲージメジャーの便利さ
編んだ後の処理
ひとつひとつは、頭では大切だと理解していたつもりだったけれど
『なんとかなるかも?』
みたいにズルして、何度も痛い目にあって
そんな失敗も笑ってくれて、怒られない楽しさもありました。
自分の中には明確に作りたいデザインがあって、それがリアルに形になった喜びも大きくて、
課題はあるようで、ないようなスタイルが私にはフィットしたのかなぁとも思います。
いつでも、
『作ってみたらいいですよ』
と言ってくれるわかなさんの軽さも背中を押してくれました。
もしも、きっちり段階を踏まえないと進めない講座だったり、着ないウエアでも作るのは必須だったりしたら、早めに心折れていたかもしれません。
バラクラバ完成までに、
アルパカの糸を編むのが難しくて悩んだり
何度も編み地を落としたり
計算を間違えてキツキツのネックウォーマーになったり
ガンガン洗って縮ませたり
重たいワンタッチフードが完成したり
思い通りにならなかったそういう失敗から、基礎の動画をもう一度見直したり、直接質問できたことで、身に沁みて学べたことも多かったです。
受講生の失敗って、講師の先生は、はぁぁ
となるのかもしれませんが、私は講座のある期間にたくさん失敗して良かったと感じています。
(もちろん、その時々では凹んでいますが)
このメッセージをもらってやっと、私もMさんのものづくりのスタイルを深く理解する事が出来た。
Mさんはひとつひとつの本質を知りたい。
「どうしてこうなるのか?」を把握して、作りたいものに対して最適な材料と最適な方法で進みたい。
だから遠回りが多くて、途中で迷子になったりもするけれど、それがきっちりハマるモノづくりをする事を重要視する方で、そのルートを進む事こそがMさんにとってのモノづくり。
他の人が見ても分からないけれど、そのバラクラバはMさんと私にとってはとてつもなく大きな成果だった。
さらなる試練

しかしそれだけではまだまだ終われず、Mさんにとっての最大の試練が待っていた。
私の講座では「セーター」が卒業課題で、多少アレンジは加えてもいいけれど、丸首のセットインスリーブの形、は一度は編んでおいてほしいものとして必須課題としている。
これをクリアしないと次のステップに進めないという、Mさんが今まで何度も挫折してきた壁がここにもあったのだ。
決められた課題、というのはMさんのモノづくりのスタイルから外れている。
つまり得意分野ではない。
その上に自分が作りたい形じゃなければモチベーションを上げようがなかった。

しかも単純作業の繰り返しはどちらかといえば苦手分野ななので、パーツを沢山編む事自体を苦痛に感じてしまう。
苦手な作業が出てくる度に立ち止まったり、集中力が落ちるのか失敗が続き、「一歩進んで2歩下がる毎日です」という痛々しい報告が続いた。
この課題に取り組み出してからMさんの明るさは消えてしまった。。
こんなに元気がなくなるなんて・・と私もこの課題をMさんに課して本当に正解だったのだろうかと不安になった。

取り掛かり初めてひと月たてど、Mさんのセーターは仕上がらない。
一方でMさんの後から入ってきた人でも、なんの壁もなくサーっとセーターまであっという間に終わってしまう人もいる。
「◯◯さんは1日でセーターを編み上げてスゴイ!」
そんな話を聞いて、Mさんが「なぜ自分はこんなに遅いのか、ダメだなぁ、やっぱり中途半端だ」と、よくある思考パターンにハマってないかな?と私もジリジリしていた。
衝撃の回答

そんな折、グループレッスンがあり、Mさんにもご参加いただいた。
他のメンバーは手編みが大好きなメンバー。
前半は少しマニアックな機械の仕組みについての講座を私がしていた。
時折Mさんから出る質問は秀逸で、さすがMさん!と思いながら答えていた。
後半は雑談タイム。
普段考えていることやちょっとしたことなど、交流を深める時間をとった。

そこでMさんが他の生徒さんたちに質問をした。
「私はセーターとか大物を編むのが苦手で。特にパーツが多くて途中で気持ちが萎えるんです。皆さんはどう乗り越えていますか?」
それに対して、手編みの手練れたちの回答は
「・・編むのが好きだから苦になりません・・」
というものだった。
Mさんにとって、これは衝撃の回答だった。
「出来ない」は才能の裏返し

その後のレッスンでMさんと私はその時の事について話した。
Mさんの機械に対する知識や興味の深さがとても際立っていた事。
そして、編む事自体が好き、という回答を聞いてどうだったか?
「出来ない」んじゃなくて「才能がある部分が違う」という事がよく分かったのではないか?
という事を私は伝えた。
なんで他の人はできて、自分にはできないの?と思っているところの裏にこそ、自分の才能は隠れていて、逆に自分に才能のないところで勝負しようと思っても、それをなんなくできてしまう人たちには追いつけず、苦しいだけで楽しくない。

それよりも、自分の好きな事、つまり才能にフォーカスして、自分がやってて楽しいモノづくりをしていく方が、結果的には近道だしすごい事が出来る。
私からの問いかけに対し、Mさんは笑顔で「そうですね」と答えてくれた。
私が言い続けてきた事の意味がやっと飲み込めた、という感じがした。
そしてさらにこう続けてくれた。

「私、自分の事、結構しっかりしてるなと思ってたんですけど、最近なんかこのダメダメな自分が本当の私なのかなって思えてきて。旦那さんにもそう思うよって言われちゃいました」
確かに私の中にも最初の優等生Mさんじゃなく、自由研究を楽しむ天真爛漫な小学生のMちゃんがいる。
何がそうさせたか、一番きっかけになったものって何でしたか?と問うと、
「うーん、、、多分、、わかなさんがやりちらかしたらいいよ!って言ってくれた事かな。。自分の中でもそう思っていた部分がきっとあって、わかなさんに背中を押された感じです笑」と答えてくれた。
方向音痴を楽しむ事が一番の近道

Mさんは子供の頃、親からやりたい事をやらせてもらえず、大人になってからも、「自分は飽き性だから、ちゃんと続けれないならやっちゃダメだ」と思い続け、最近やっとやってもいいと思えるようになったと話してくれた事があった。
きっと、こういう事が大なり小なりほとんどの人にあると思う。
習い事はきちんと最後までやらなきゃ、とか、そんな事やっても意味ない、とか。
効率を求める大人に言われて、呪縛をかけられてしまうのだ。

確かに向かっているゴールが分からない怖さもあるけど、やりちらかしている時が楽しければいいし、ゴールに着かなかったけど、まあ楽しかったからいいや!と最後に笑えるほど自分の好きな事をやって生きていきたいと私は思う。
だから私の教室はとにかく楽しむ事、がモットーである!
「あーなんかそんなに課題進まなかったけど、めっちゃ楽しかったから、ま、いいや!」
と大笑いしながら走り切ってもらえたら何より嬉しいし、私もその為に努力を惜しまずいようと思っている。
編み機教室のご案内

相変わらず、これを読んで私の教室に入りたいと思うかは謎、という文章になってしまいましたが。。
こんな風に私が生徒さんと関わっているというのが分かってもらえたかなと思います。
編み機の技術の習得だけじゃなくて、自分らしいモノづくりってなんだろう?とか、うまく言葉に出せないモヤモヤも一緒に解決していきたいと思っています。
実際レッスンでは、実技をするよりお話だけで終わる事も多いです。
Mさんとのレッスンは常にマニアックな爆笑トーク満載でした笑
一緒に楽しくレッスン?しましょう〜
ご興味のある方は是非無料教室体験へお申し込みくださいね!
オンライン機械編み教室について

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先程、バラクラバが編み上がりました!

手持ちのバラクラバを元に製図して、階段状の減らし目を描き、さらにベンガラ染までやり抜きました
ただいま乾燥中のため、乾き次第写真を送りますが、かなり嬉しいため、先走ってのご報告です
ものすごく『やり切った感』があって、とても嬉しいです
想像通りにものづくりが完成するのって自分にとってすごく元気になることなんだなぁとしみじみしてました
わかなさんの講座受けて良かったなぁとも。